前回、
SLAYERさんのSOUTH OF HEAVENをご紹介した際、前作の3rdアルバムでスピードとアグレッションを極め過ぎた為に、SOUTH OF HEAVENはその正反対のアルバムとなったとお話しました。そして、本人たちも不本意なご様子であり、4thアルバムにあまり納得してなさそうだとも。
SLAYERさんの中の人達の葛藤、
よく分かります。わたしにも似たような経験があるからです。とは言え、わたしはしがないアマチュアノイジシャン。彼らは人気実力ともに押しも押されもせぬメタルゴッド。世界中のメタルファンが崇拝している存在ですから、わたしなんぞ、塵芥が「分かる」だなんて烏滸がましいにも程があるってものですが。。。
それは承知の上。こんなブログを書くこと自体が単なる恥晒しなのも理解しています。それでも「人生は恥をかいてナンボ」、ゲーテさんも「薔薇が太陽の輝かしさを認めたら、どうして咲く気になるだろう」と言っています。良い事言いました、ゲーテさん。書かせて頂きます。
あれは、まだわたしが紅顔の美少年だった頃(え?)、自分の追求するノイズサウンドに到達した作品を創る事に遂に成功しました。
それが猛毒注意のこの曲、Funeral Ticketsです↓
しかし、その後が大変でした。
わたしの音と言えるオリジナルのサウンドが完成したのはいいのですが、何をどう演奏しても上の曲と同じにしかならない気がして、全く曲作りが手に付かなくなってしまったのです。
今考えればギターのチューニングはそのまま。結構だけ少し変えてもっと短い曲とか、バックのバッキングパターンを変えた曲とか創ればいいだけなのですが、当時のわたしには、それがどれも上のFuneral Ticketsと同じ曲に聞こえてしまって…。どうしてもそこから一歩が踏み出せませんでした。
本来なら、ここで似たような金太郎飴作品を連発してアルバムを創り、ライブをやって、と一気呵成に活動を本格化させていれば、また違った道も拓けたかと思うのですが、わたしには出来ませんでした。
更に運の悪いことに、この時期、仕事が急に忙しくなり、忙殺されてしまいます。結果、音楽活動は休止となり、活動再開したのは何と3年後。それも、全く違うアイデアの下に制作を始めたのでした。
全く違うアイデアでの曲作り。
これ、芸人さんで言ったらキャラ変です。最近見なくなりましたが、にしおかすみこさんの女王様キャラや、杉ちゃんのワイルドキャラなんかが好例でしょうか。あの人達があのキャラに辿り着いて売れるまでには、何回かキャラクターを作っては変え、作っては変えを繰り返しているはずです。
それと、似たような変成を経て、ようやく、わたしは音楽活動を再開出来ました。この自己変容がなければ、きっと上の曲を制作した時点でわたしの音楽活動は終わっていたでしょう。
ピンチはチャンスと言いますが、その逆もまた然り。スレイヤーさんもわたしも、自分のオリジナリティを獲得した好機の時期に、酷いスランプに陥り、音楽活動自体の危機に。
どう聴いても毒物のわたしの音、Funeral Tickets。ここでわたしのこの手の音楽(?)活動が終わったのは世の為、人の為だったのかも知れませんw
↑
こうした自虐、実はわたしのブロックだと最近気が付きました。これについても、そのうちに書こうと思います。
SLAYERさんはわたしと違って、このピンチをチャンスにしました。
わたしと違っていた凄いところは2つあります。
1つは、苦境に立たされた時に曲のテンポを落とすと即断出来たこと。わたしはそれが上手く行かずに引きずって拗らせてしまい、遂には手が付かなくなってしまいました。
2つ目は、スピードを落とすと言うシンプルな解決策を取ったこと。一口にバンドの方向転換と言っても、様々なやり方があります。音楽には様々なジャンルがありますから、テンポを落とす以外にも沢山の選択肢があったはずです。けれども、全く異なる他のジャンルにチャレンジするのではなく、シンプルにスピードを落とす解決策の決断が優れていたと思います。
曲をスローにすると、それまで求められなかった様々なこと、技術もそうですがメロディや曲の構成力などが求められます。こうした課題に正面から取り組み、自分達の地力を涵養したからこそ、一介のスラッシュメタルバンドに終わらず、今日までメタルゴッドとして君臨出来たのではないでしょうか? 実際、5thアルバムのWar Ensembleには、そうして培ったノウハウがギッシリ詰まっています。
また、曲をスローにしただけで別のジャンルのバンドになった訳ではないので、わたしの様なキャラ変を経験していません。キャラ変すると、それまでのファンの大半を失ってしまいますから土台を失ってしまいます。けれども、ファンも自分達のアイデンティティも失わずににキャリアを形成して来れました。これは大きいと思います。
何よりスピードを落としただけなので、自分達が更に経験を積んで技術や新しい表現方法を身に着けた時、再度、速い曲を創ることも可能です。その時には、スローな曲で学んだことを詰め込み、それまで以上にスケールの大きな佳い曲を創り、演奏出来ます。実際、6thからはまた高速スラッシュメタルに戻るのですが、3rdよりもずっとヘヴィーで構成も面白く、聴き飽きない内容に仕上がっています。
試練を乗り越えた後にやって来た別の大きな試練、わたしもSLAYERさんも別々のやり方で乗り越えたのですが、圧倒的にSLAYERさんの方が上手く乗り切っていますね。まさしくピンチがチャンスになっています。
今回、この記事を書いていて、帝王と呼ばれるまでになるには、やはりそれなりの工夫や努力があったのだなと改めて思いました。